ディルムッド・オディナ、フィン・マックール
前回に続きケルトつながりでディルムッド・オディナ。クー・フーリンの時と同様ここでもイェイツが一枚噛んでおり、アイルランドの小説家ジョージ・ムーアがディルムッドと彼に恋慕した王の妻グラニアの伝説に取材した小説をイェイツが協力して演劇化した(「グラーニアとディアーミド」1901年)。
劇音楽はこれまたおなじみエルガー。もっとも音楽は序奏、ディルムッドの葬送行進曲、歌曲"There are seven that pull the thread"の3曲しかないが、荘重な葬送行進曲をはじめどれもロマンティックな楽想にあふれている。
Elgar : Grania and Diarmid Op.42 : Incidental Music & Funeral March
- アーティスト: アンドリュー・デイヴィス
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一方、グラニアを寝取られた主君フィン・マックールにゆかりの音楽はというと、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」がある。
- アーティスト: カラヤン(ヘルベルト・フォン),メンデルスゾーン,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1997/04/09
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はて、このクラシックのポピュラー名曲がどう関係あるのか? 曲名の「フィンガルの洞窟」はスコットランドのヘブリディーズ諸島に実在する風光明媚な地だが、そのフィンガルとはゲール語の叙事詩オシアン詩集の登場人物で、ケルト神話のフィン・マックールと同一視されているということである。そう聞くとなんだかこの荒涼たる景色を思わせる「フィンガルの洞窟」の描写的な音楽の向こう側に、親指かむかむしている男が浮かんでくるような、こないような……。